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第5章 部材断面の諸性質

 構造部材の設計は、外力の種類、
 すなわち引張りあるいは圧縮、曲げ、せん断などに対して、
 安全で力学的効率の良い断面形状を選び、寸法を決定しなければなりません。
 また、部材は、さまざまな効率の良い断面形状が工夫されています。

 はりに作用する荷重は、軸方向(長手方向)ではなく軸直角方向に作用します。
 つまり横荷重といわれるもので、集中荷重、分布荷重、モーメント荷重などがあります。
 横荷重が作用することにより、
 はりの断面には曲げモーメントが生じます。
 はりは、曲げモーメントによって横荷重を水平に伝達する構造物であり、
 部材の上側、下側に最大の曲げ応力が生じます。

 鉄骨構造のはりには、よくH形鋼といわれる材料が使われます。
 これは、部材の上下端にあるフランジ部分に多くの面積を割り当て、
 曲げモーメントに耐える構造となっています。

 はり断面の持つ曲がりにくさの性質は、
 断面2次モーメントというパラメータで表現されます。
 このように外力に対して抵抗するためには、
 部材の形状等、断面の諸性質を最大限に活かして設計する必要があります。

 それでは、経済的な断面で強度を上げるためには、
 どのような工夫がなされているのだろうか。

 例えば、1つの部材に対し外力が作用したとき、
 同じ断面積の部材であっても、
 断面が縦長になっているか横長になっているかで、
 部材のたわみ方は異なります。
 曲げ、たわみなどの変形しやすさの度合いを数値的に表現できるものがあれば、
 曲げ変形に対してどの程度耐えられるかを判断するパラメータとなります。
 この章では、この様な断面の特性を表すさまざまな断面諸量についてみていきましょう。

5.1 断面諸量

 構造物の内部に生ずる内力や部材の変形を研究するには、
 構造物を構成する部材の長さのほかに、
 部材断面の諸性質が重要な役割を果たします。
 断面の特性を表す諸量には、
 主に断面積、断面1次モーメント、断面2次モーメント、
 断面相乗モーメント、断面2次極モーメント
 及び断面係数等があります。

 これらのうちどれを用いるかは、
 何を評価したいかによって異なります。
 第6章 断面力と応力で説明する部材に加わる代表的な荷重パターン
 (引張力、圧縮力、せん断力及び曲げ)によって生じる応力や変位の式をよく観察して、
 どのようなパラメータが、影響しているかを理解する必要があります。

 例えば、ある部材の変形のしにくさ、つまり剛性を評価する場合を考えます。
 引張、圧縮力を受ける部材の剛性に影響を与えるパラメータは断面積です。
 曲げを受ける部材の剛性に影響を与えるパラメータは断面2次モーメントです。
 同様に、ある部材が壊れないこと、
 つまり強度で評価する場合を考えます。
 引張、圧縮力を受ける部材の強度に影響を与えるパラメータは、断面積です。
 曲げを受ける部材の強度に影響を与えるパラメータは断面係数です。

 これらはどういうもので、
 設計する上でどのように用いられているのだろうか。
 順にみていきましょう。

5.1.1 図心と断面1次モーメント

 断面1次モーメントは、
 図形の図心を算出するのに利用されます。
 図心をとおる任意の直交軸に対して、
 断面1次モーメントは0となります。
 ある軸に対する図形の断面1次モーメントとは、
 その図形の面積と軸からその図形の図心までの距離との積です。

 例えば、幅b、高さhの長方形が、
 底辺をX軸にとった断面1次モーメントというのは、
 面積bhと軸Xから長方形の図心までの距離h/2との積、
 bh×h/2=bh2/2
 となります。
 つまり、bhなる大きさの力が、
 図心Gに働いているときのX軸に対するモーメントと考えます。

 図に示す断面積がAである図形について、
 X軸とY軸との直交座標を考えます。
 微小面積dAのX軸に対するモーメントを求めるために、
 dAの面積にdAからX軸までの距離yを乗じます。
 これはdAという微小面積のX軸に対するモーメントですから、
 図形全体の面積Aについて集計すれば求めらます。

 X軸に対するこの図形全体のモーメントGを式で表すと、

 G=∫y・dA 

 となります。

 同様にして、Y軸に対するモーメントG
 G=∫x・dA となります。
 このG、Gをそれぞれ、X軸、Y軸に対するこの図形の断面1次モーメントという。
 次に図形の中に1点Gを考え、
 その座標を(x0, y0)としたとき、
  x0=Gy/A =∫x・dA/A
  y0=Gx/A =∫Ay・dA/A
 で与えられるような点(x0, y0)を、その図形の図心という。

 例えば、図のように、幅b、高さhの長方形の図心Gの位置を求めてみよう。

  G=bh×h/2=bh2/2 (X軸に対する断面1次モーメント)
  G=bh×b/2=b2h/2 (Y軸に対する断面1次モーメント)
  A=bh
  x0=Gy/A=b2h/2×1/bh=b/2
  y0=Gx/A=bh2/2×1/bh=h/2
  図心の座標(x0, y0)=(b/2, h/2) となります。

 今、X軸、Y軸が図心をとおっている場合、軸から図心までの距離は、x0=y0=0ですから、
  x0=0=Gy/A=∫x・dA/A  ⇒ Gy=0
  y0=0=Gx/A=∫y・dA/A   ⇒ Gx=0
 となり、上式が成立するためには、G,Gが0とならなければならない。
 したがって、図形の図心をとおる任意の軸に対する断面1次モーメントは、
 0であるということがいえます。

5.1.2 断面2次モーメント

 図に示すような面積がAである図形において、
 X軸に平行な微小面積dAを考え、
 そのX軸からの距離をyとするとき、

 Ix=∫y2dA
 で与えられる式Ix
 図形AのX軸に対する断面2次モーメントという。
 同様にして、Y軸に対する断面2次モーメントIy
 Iy=∫2dA で表す。

 また、面積がAである図形の図心Gをとおる軸をXとし、
 これと平行で、かつy0の距離にある他の軸をx軸とするとき、
 このX、x軸に対する図形Aの断面2次モーメントをそれぞれIX、Ixとすれば、
 Ix=IX+y02・A となります。

 断面2次モーメントは、
 部材の強度や剛性を求めるときに、
 非常に重要な意味を持つパラメータです。
 図心をとおる軸は無数に存在しますが、
 その内、断面2次モーメントが極大または極小になる軸を主軸といい、
 主軸は互いに直交します。
 主軸については、5.1.3 断面相乗モーメントで説明します。

【例題5-1】

 面積がAである図形の図心Gをとおる軸をXとし、
 これと平行でy0の距離にある他の軸をx軸とするとき、
 このX、x軸に対する図形の断面2次モーメントをそれぞれ IX、Ixとすれば
  Ix =IX+y02・Aで表せることを示せ。

 x軸に対する断面2次モーメントは、 Ix=∫2dA

 図に示すようにyは、y=y0+Yと表せます。
 したがって、上式は、
 Ix=∫2dA=∫(y0+Y)2dA
   =∫(y02+2y0Y+Y2dA
 y0は、一定の距離であることから定数であり、
 積分記号の前に出して整理すると、
  =y02dA+2y0YdA+∫2dA
 ここで、∫dA=A、∫2dAは、
 図心軸に対する断面2次モーメントであるから IX
 また、第2項の∫YdAは、図心軸に対する断面1次モーメントですから、0になります。
 したがって、
   Ix=y02dA+2y0YdA+∫2 dA
    =y02・A+0+IX
    =y02・A+IX
    =IX+y02・A となります。

【例題5-2】

 (a)、(b)図形のx軸における断面2次モーメントを求めよ。

【長方形の底辺をとおる断面2次モーメント】
 次に長方形の底辺をとおるx軸に対する断面2次モーメントを求めましょう。
 x軸に平行に微小面積dAを考え、
 x軸からの距離をyとします。

【長方形の底辺をとおる断面2次モーメント】
 (図心をとおる断面2次モーメントが既知の場合)

 Ix=IX+y02・A

 を適用して求めてみます。

 IX=bh3/12 (図心をとおる断面2次モーメント)
 y0はx軸(長方形の底辺)から図心までの距離ですから、
 この場合 h/2 です。
 したがって、 Ix=IX+y02・A
          =bh3/12 +(h/2)2×bh
          =bh3/12 + bh3/4
          =bh3/3

5.1.3 断面相乗モーメント

 平面図形のx軸及びy軸に関する断面相乗モーメントは、
 次の積分によって定義されます。
 断面相乗モーメントは、
 対称性のない平面図形の主軸を求めるときに必要となります。
 主軸とは、断面2次モーメントが極大または極小となるような軸をいいます。

xy=∫xydA

 微小面積dAにその座標の積を乗じて、
 全面積にわたり積分を行う。
 断面2次モーメントは常に正ですが、
 断面相乗モーメントは、xy軸の当該図形の位置により、
 正にも負にも、また0にもなります。

[断面相乗モーメントの正負について]

 平面図形のx軸及びy軸に関する断面相乗モーメントは、
 次のように定義されます。
xy=∫xydA
 断面2次モーメントは常に正ですが、xy軸の当該平面図形の位置関係によって、正にも負にもまた、0にもなります。
 T.平面図形が全部第1象限にあれば、x座標もy座標も正だからIxyは正です。
 U.平面図形が全部第2象限にあれば、x座標は負で、y座標は正だからIxyは負となります。
 V.平面図形が全部第3象限にあれば、x座標も負y座標も負だからIxyは正となります。
 W.平面図形が全部第4象限にあれば、x座標は正で、y座標は負だからIxyは負となります。
 平面図形が2つ以上の象限にまたがって存在するときは、
 Ixyの符号は、座標軸に対する図形の面積分布の状態に依存します。

 例えば、平面図形が下図のようにy軸で対称となっている場合は、
 ある正のx座標をもつ微小面積要素dAに対して、
 常にこれと同一のy座標をもち、
 符号だけが異なるx座標をもちます。

 つまり等しい大きさで対称の位置にある面積要素dAが存在します。
 したがって、xydAは互いに打ち消し合い、Ixyは0になります。
 すなわち、一方の軸が対称軸になっているような座標軸(図心をとおっている)に対しては、
 断面相乗モーメントは、0になります。
[断面相乗モーメントの平行軸定理]

5.1.4 断面2次極モーメント

 断面2次モーメントは、断面内に横たわる軸に関するものですが、
 断面2次極モーメントは、断面に垂直な軸に関するもので、
 次のように定義されます。

 ここで、微小面積dAに対し、点0に垂直な軸からの距離rの2乗を掛け合わせ、
 断面全全体について積分したものです。
 慣性極モーメントとも呼ばれます。
 図のように直交座標軸x,yを取れば、
  r2=x2+y2の関係式が成立するので、

 Ip=∫A r2 dA=∫A (x2+y2)dA=∫A x2 dA+∫A y2dA=Ix+Iy という関係式が成立します。

 つまり、任意の点に関する断面2次極モーメントは、
 同じ点をとおる直交座標軸x,yに関する断面2次モーメントの和に等しいことを示しています。

 Ip=Ix+Iy

  Ix:任意にとられた直交座標軸xに関する断面2次モーメント
  Iy:任意にとられた直交座標軸yに関する断面2次モーメント

【例題5-3】

 図の丸棒の断面2次極モーメントを求めなさい。

【解答5-3】

 円の全面積を半径がr、断面内部に赤色で示す微小領域(円輪)を設定します。
 この微小領域の幅を限りなく小さいdrとすると、
 この微小領域の面積dAは、

 dA=2πrdrであり、

 定義により、この微小領域の円中心に関する断面2次極モーメントは、
 r2・dA=r2・2πrdrとなります。
 円全体の断面2次極モーメントを求めるには、
 これを全面積にわたり積分します。

【例題5-4】

 図の正方形断面の断面2次極モーメントを求めなさい。

【解答5-4】

【例題5-5】

 図の断面2次極モーメントを求めなさい。

【解答5-5】

5.1.5 断面係数

 X軸が図形の図心Gをとおります。
 X軸に対するその図形の断面2次モーメントをIXとします。
 X軸から図形の上縁と下縁までの距離を、それぞれy1、y2とするとき、
 W1=IX/y1を上縁に対する断面係数
 W2=IX/y2 を下縁に対する断面係数 という。

 今、曲げモーメントは同じだとすれば、
 応力を半分にするには、断面係数を倍の大きさに変更すればよい。
 断面係数は板厚(高さ)の2乗がパラメータとして入っているから、板厚を√2倍以上にすればよいことになります。

5.2 部材の特質

 構造物に外力が作用したとき、
 部材の変位や変形は、部材の接合状態によります。
 また、同じ接合状態であっても異種の材質間、断面形状、大きさの違いにより、
 変位、変形は変わります。

 例えば、柱部材がはり部材に比べ著しく強度が高ければ、
 はり部材のたわみ角は、固定端ばりと同様にたわみ角は0に近づく。

 一方、柱部材の強度がはり部材より著しく小さい場合には、
 はりのたわみ角は、単純ばりの可動支点のようなたわみ角が生じます。

 このように、構造物の接合部分の変形は、
 柱とはりの相対的な強度のバランスによって決まります。

5.2.1 剛度、剛比

 剛度は、K=I/l で表す。
 断面2次モーメントIを、その部材の長さlで割って求めることができます。
 剛度は大きいほど、曲げにくい剛性の高い部材となります。
 この剛度を、ある部材を基準として標準剛度(K0)を決めます。
 それで割ったものが剛比となります。
 標準剛度(K0)は任意の値でいいが、通常は、剛度の中で最も小さな値を用いることが多い。
 剛比は、部材同士の力を受け持つ強さの比率を表します。

k=K/K0  (k:剛比 K0:標準剛度)

5.2.2 力の伝達

 ある剛節接合部(固く結合されて回転を許さない節点)に
 外力としてモーメント荷重を作用させたとき、
 接合されている部材の剛比に比例してモーメント荷重が分配されます。
 これを分配モーメントという。

  分配モーメント=その部材の剛比×モーメント荷重/節点に集まる剛比の和

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